Mastering Myself

VCとスタートアップ

Yコンビネーター本を読んで(その1)

Yコンビネーターの本を読んだので、良いと思った節の引用と軽い感想を書いてまとめておく。

Yコンビネーター

Yコンビネーター

 

 

スタートアップを始める時期

32歳はおそらく25歳より優れたプログラマーだろうが、同時に生活コストがはるかに高くなっている。25歳はスタミナ、貧乏、根無し草性、同僚、無知といった起業に必要なあらゆる利点を備えている

ポール・グレアム自身も「貧乏というムチを当てられているのでなければスタートアップのストレスに耐える気にはなれないとわかっていたんだ」と言い、2度目の創業はしなかったように、始める時期に対する表現だけを見てもそのストレスとシビアさがわかる。

そう考えるとシリアルの方ってすごいな

市場がきみたちをクビにする

学校やら会社やらの経験から、きみたちはなにかヘマをするたびに小言を言われることにいわば慣れてしまっているだろう。(略)しかしわれわれはきみたちをクビにはしない。しかし市場がきみたちをクビにする。

これまた超ド級なキツイ言葉。でもこの生々しさが気持ち良い。その後のケアは必要とは思うが。

スタートアップの集積

スタートアップが集積していない場所にいることはスタートアップにとって害になる。いろいろな間接的証拠からそれは言える。(略)こうした都市でスタートアップが成功しにくい理由は正確にはわからない。何百もの小さい要因が重なっているのかもしれない。しかしともあれ何か原因があるのだ

YCはスタートアップに何かを課すことはあまりないが、「シリコンバレーへの移住」は要求する。集積することのメリットがあるのは間違いないんだろうな、、

新しいアイデアを生みだす3カ条

イデアを生みだすための3カ条だ。1. 創業者自身が使いたいサービスであること 2. 創業者以外が作り上げるのが難しいサービスであること 3. 巨大に成長する可能性を秘めていることに人が気づいていないこと

「創業者自身が使いたいサービス」なのは超重要なんじゃないかと思う。自分が欲しくないものを作るのってよほど頭良くないと難しい気がする。

競合はいるか

セコイアは「そのアイデアで、どんなつまらないソリューションでもいいから、今現に誰かが提供していないか?将来のユーザーを奪い合うことになりそうなライバルはいないのか?」と創業者に尋ねる。「いえ、誰もいません」というのが一番いい答えだと思うだろう?しかしそうではないんだ。それはそのアイデアに差し迫った需要がないことを意味する

直感だと競合がいない方がフロンティアであり、「良いこと」だと思ってしまいがちだが、この世の中に提供されていない全く新しいものはほぼ無く、大抵は何らかのカタチで提供されている。きっとここから言えるのは、そうしたすでに提供されているものを「より良くする」して代替するのがスタートアップのアイデアなのかなと思った。

急いでローンチしろ

なにかアイデアを思いついたら最小限動くモデルをできるだけ早く作れ。作りかけのプロトタイプでもかまわない。とにかく現実のユーザーの手元に届けて反応を見る。そうして初めてそのプロダクトがユーザーが求めていたものなのかどうかがわかる

リード・ホフマンも「最初にリリースしたプロダクトが赤面するほどひどいできでないというなら、そのリリースは遅すぎたのだ」と言ったらしい。

僕自身もプロダクトとまでは言わないが、いくつかアプリを公開したりハッカソンに出て、作り手にとって「まだ不出来なもの」を公開することのストレスや怖さを実感している。稚拙なデザインは恥ずかしいし、バグがあったらどうしようという不安がある。そういう意味でリード・ホフマンの「赤面してないなら、それは出すのが遅い」という言葉は勇気付けられると思う。

事業アイデアを実験するという視点に立てば急いでローンチすることは正義だと思う。

投資判断

私が投資すべきかどうか判断する際にいちばん注目するのは創業者です。今42歳ですが、「私はこの創業者の下で働きたいと思うだろうか」と自問することにしています。(略)創業者は私にその下で働いてみたいと思わせるような潜在能力を持つ必要があります

これはSV Angelのデビット・リーが述べた言葉だが、よくシード・アーリーの投資家が「人に投資する」というインタビューを見かけて、どうやってその人を見分けるんだろうとずっと疑問だったが、「その人の下で働きたいか」という基準は良いなと思った。

採用はスタートアップにとって最も重要であり難しいことの一つだろうし、そういう意味でも働きたいと思わせる力が創業者に備わっているかを見るのは良いなと思った。

ちなみにこれに続けて、「エンジニアである創業者が好き」と述べており、理由として「アイデアがうまくいかなかったときに方向転換してやり直し、窮地から脱出することができるから」だとしている。

成長率

毎週10%の伸びというのは黄金の数字なんだ。それはとてつもなく高い成長率だ。1年に換算すると142倍の成長になる。常に成長率に目を光らせ、なんとしても設定した目標成長率を達成しなくてはならない。(略)成長率は羅針盤だ。

この一節だけで、ポール・グレアムがいかに「成長率」を重要視しているかがわかる。しかも毎週10%。