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中央集権アプリを分散化したプロトコル上に構築するのがベストプラクティスかも

この記事は以下のPlaceholderというNYにあるクリプト系のVCパートナーの一連のツイートをまとめたものです。

中央集権のアプリを分散化したプロトコル

彼は「中央集権なアプリを分散化したプロトコル上に作るのが良い組み合わせ」だと主張している。なぜなら多くの人が指摘しているように、全てを分散化させるというのは誤りであり、重要なのは”分散化させることによって利益があるものを分散化させる”ことだからだ。

その例としてcoinbaseやCircleを挙げている。これらはこれまでのWebアプリと同様に中央集権なアプリで始めたが、よくよく見るとエンドユーザーにとって利益のある分散型プロトコルオープンソースのクリプトインフラの利用を増やしてきている。(stablecoinをZeppelinOSを利用して作っている)

中央集権なクリプトアプリを分散化されたプロトコル上に作ることのメリットとして

を挙げている。

こうしたメリットを享受して長期的には、分散型のインフラ上に作られた中央集権なアプリは成長するカギを発見し、公的なネットワークへの懸念を持ち、自前でインフラを所有しようとする現在主流となっているアプリケーションに打ち勝つだろうとしている。

さらに、現在主流となっている巨大なアプリケーションがクラウドへの移行に多くの時間を要したのを考えると、そうしたアプリが手遅れになる前に、分散型プロトコルへと移行するのは難しいと予想している。

DAppsは苦境に立っている

多くの人が指摘するように、純粋なDApps(プロトコル以外も分散化したアプリ)は使い勝手が良くない。エンドユーザーとの接点を作るには、高い応答性が必要だ。

そしてDAppsは中央集権アプリと物理的なレスポンスタイムにおいて厳しい競争を強いられている。

ここでいう「高い応答性」は、おそらく処理速度やトランザクション手数料の問題などを克服して使い勝手が良い状態のこと。

DApps普及への大きな課題としては

  • レスポンスタイム(アプリの読み込み速度とか、ヌルヌル動くか的な)
  • カスタマーサービス
  • ユーザー数

がある。

レスポンスタイム

レスポンスタイムについては、The GraphPicolo NetworkといったプロジェクトがDAppsのレスポンスタイムを向上させようとしてるが、人間がラグを感じないくらい十分な性能に至るかどうかは未知数だ。

カスタマーサービス

DAppsを通じたカスタマーサービスは難しい課題だろうと思う。なぜならカスタマーサービスは人間の感性や人間的なやりとりが必要であり、なくなることはないからだ。

ユーザー数

さらに、クリプト領域の中央集権アプリは現在エンドユーザーを大量に抱えており、これらのアプリが技術的にクリプトに関わり続けるならば、DAppsがこうしたアプリに打ち勝つことは難しい。

よってこうした理由から、もし暗号資産に投資するならLayer1やLayer1上の重要なミドルウェアに着目することを彼は薦めている。

中央集権なアプリが構築している、もしくは利用しているプロトコルに着目するべきだと。なぜなら、それらはEconomic Abstraction*1やどれほど高い処理速度に取り組んでいるかに関係なく、ファンダメンタルな価値を持つだろうから。

(この「ファンダメンタルな価値を持つ」理由が書いてなくて自分なりに考えた結果、プロトコルレイヤーの上に乗ってくるアプリケーションのいずれかが価値を持つ可能性があって、そうしたら自ずとその下のレイヤーのプロトコルも価値を持つよねというロジックなのかなと。よく言われるEthereumの攻撃で得られる利益はETHに加えて、上に載っているトークンも含めたものみたいな。)

したがって、短期〜中期的には中央集権アプリは引き続き大量のユーザーを獲得し続け、長期的には人々はDApssの応答性の改善に取り組んでいくと彼は考えてる。

感想

自分は最近、よく「DAppsで分散化した◯◯を!」みたいなことを言われる割に、そんなことをイデオロギー以外を目的にやる必要性を感じなくて、ブロックチェーンのアプリって必要なくね?と思ってたところにタイムリーなツイートだったのでまとめてみた。

この業界「それ分散化してないじゃん」みたいに指摘されがちだが、そもそもプロジェクトを立ち上げて、それを市場にフィットさせて、競合を倒して…みたいなことを完全に分散化されたEntityが達成するのは個人的には困難だと思っていて、少数の勇気と知性のある人が集中的にやるのが好ましいと思っている。

なので中央集権的にアプリは作って、利用するプロトコルは分散化してるものを採用するという形式はそうならざるを得ないし、ベストプラクティスな気がする。実際Binanceなんかはそのお手本だろう。

分散化したプロトコルのEthereum上でBinanceコインを発行してICOで資金を集め、中央型の仮想通貨取引所というアプリケーションをその分散化したプロトコル上に構築されているBinanceコインを絡めながら運営して、最大限その分散性と経済性から恩恵を受けながら最速で最大規模に成長した。

そして現在ではDEXのリリースを発表するなど、徐々に分散度を高めていっている。この一連の流れは、まさにこのツイートのアプローチだろう。アプリケーション全体すらもいきなり分散型プロトコルに載せる必要はなく、トークンなど一部を載せ、利便性が高いところから徐々に移行していく。

こうしたモデルを考えるとアプリケーション層もやれることはありそうに思えてきた。ただ、依然として無理矢理トークンを組み込む必要性はないと思っているが。。。

Twitter→ ムラカミユウヤ (@yu8_muraka3) | Twitter

*1:Economic Abstraction: ブロックチェーンのネイティブのコインやトークン以外で手数料の支払い等を行うこと。例えば、Ethereumのスマートコントラクトを動かすためのgas代をETHではなくERC20トークンで支払うこと。